多血小板血漿(Platelet Rich Plasma: PRP)の投与による治療
本療法は自由診療となり、社会保険・国民健康保険など医療制度上の保険で受けることができません。
あらかじめご了承ください。
はじめに
このページには、当院でPRP治療を受けていただくに当たって、ご理解いただきたいこと、知っておいていただきたいこと、ご注意いただきたいことについての説明が書かれています。
内容をよくお読みになり、ご不明な点がありましたら遠慮なくお尋ねください。
- このページの文章をお読みになり、説明を受けた後、この治療を受けることも受けないことも患者さまの自由です。
- 治療に同意された後で、治療を受けないことを選択する場合や、他の治療を希望される場合も、患者さまが不利益を受けることはございません。
- 血液を採取して、PRPを投与するまでの間に、治療を中止することが可能です。ただし、血液採取に使用した消耗品の費用は請求させていただくことがあります。
- 患者さまには治療に関する情報の詳細を知る権利があります。ご不明な点がありましたら遠慮なくお尋ねください。
- なお、本治療は、安全未来特定認定再生医療等委員会の審議に基づき承認を得た上で、厚生労働省に届出して実施しております。(*備考参照)

PRPとは
PRPはPlatelet-Rich Plasmaを略した名称で、日本語で多血小板血漿と言います。PRPは血小板を濃縮して活性化したものです。
血小板は血液1μLに10~40万(個)含まれて、血液全体に占める割合は1%以下と言われています。血小板は、血管が傷ついたとき、傷ついた場所に集まって血を固める働きがあります。
その際、血小板から多量の成長因子が放出されます。この成長因子は、傷ついた組織の修復をうながします。
当院で使用するPRPは高濃度の白血球を含むL-PRP(Leucocyte-PRP)です。
この成長因子を使って、治りにくい組織の修復を行い、早く組織を修復する方法がPRP治療です。
ただし、PRPには組織修復を始める働きはありますが、どのような組織を作るかについて指示する働きはありません。
そのため、PRP治療の後、どのような組織になって欲しいかによって、後療法(PRP治療の後に行う運動など)が変わります。
PRPを用いた治療について
患者さんはしばしば血液検査と言って、採血されることがあります。日常的に行われている医療です。
この「多血小板血漿を用いた治療」とは、普通に検査の時に採血するようにご自身の血液を採取して、その血液を特殊な方法で濃縮して治療に利用するという方法です。
実際には採血した血液から血小板だけを濃縮して(先にも述べましたが多血小板血漿:PRPと呼びます)治療に応用するのですが、この方法は数少ない再生医療の技術の内、古くから実用化されてきて、既に欧米ではその有効性と安全性が確認されています。
PRP治療法は、患者様ご自身から採血した血液からPRPだけを濃縮して関節部位の治療に利用するという方法で、ご自身の血液を使用するため身体に及ぼす負担が少なく、副作用が少ない治療法であり、副作用が懸念される非ステロイド性抗炎症剤の服用や、ステロイド剤やヒアルロン酸製剤の関節内注射、また、運動療法や温熱療法等の物理的治療、高位脛骨(こういけいこつ)骨切り術や人工関節置換術等の外科的治療に代わる治療法として、諸外国でも考案されています。

他の治療法との比較
- ステロイド剤を用いた治療
- 抗炎症作用を期待して、ステロイド剤を用いた治療が通常診療で行われていますが、逆にステロイド剤の副作用で重篤な感染症の誘発・骨粗鬆症の増悪・薬剤離脱困難等が生じてしまう可能性があります。
- ヒアルロン酸を用いた治療
- 関節腔内に注入されるとクッションのような働きをし、痛みを和らげる効果があります。
ヒアルロン酸注入は、ヒアルロン酸が関節腔内から消えていくため(3日で消失※)、標準的な治療として1週間毎に連続5回注入する必要があります。
ヒアルロン酸は医薬品として承認されており、品質管理された安全性の高いものですが、アレルギー反応などの可能性は完全には否定できません。
PRP治療は、患者さま自身の血液から製造するため、患者さまごとに品質のばらつきがでる可能性がある一方、アレルギー反応などの可能性は極めて低いと考えられます。
※アルツ関節注25mg添付文書より
PRP | ヒアルロン酸注入 | |
---|---|---|
概要 | 関節腔内に投与することで、損傷した患部の疼痛を和らげる効果があり、また、組織を修復する効果が期待される | ヒアルロン酸は関節腔内に注入されるとクッションのような働きをし、痛みを和らげる効果がある |
効果持続期間 | 6~12ヶ月程 | 6ヶ月程 |
治療後のリスク (注入部位の痛み、腫れなど) |
リスクはほとんど変わらない | |
品質の安定性 | PRPは患者さま自身の血液から製造するため、患者さんごとに品質がばらつく可能性がある | 医薬品として承認されており、品質は安定している |
アレルギーの可能性 | 自家移植のため、極めて低い | 品質管理された安全性の高いものだが、アレルギー反応などの可能性を完全には否定できない |
治療の方法
治療は日帰りで終わります。



- 当日は安静にしてください。痛みを強く感じるときは適宜鎮痛剤を服用してください。
- 翌日からトレーニングを開始します。
- 治療の経過観察のため、1ヶ月後、3ヶ月後、6ヶ月後にご来院ください。ご来院できない場合は、当院より追跡調査を行います。また、追跡調査1ヶ月より前であっても、何かあった場合はいつでも来院して診察を受けてください。
- 患者さまの症状によっては、治療を数回行うことがあります。治療前、または治療後の状態から担当医師が判断し、患者さまにお伝えいたします。
治療効果には個人差があります。この治療法で効果がない場合は、既存の治療法も含め検討します。※既存の治療法については担当医師とご相談ください。
変形性膝関節症に対する治療対象は、下記グレード1~3で疼痛の強い患者およびグレード3、4で手術の対象ではない患者様や手術待機患者様としております。
初期 | 進行期 | |||
---|---|---|---|---|
グレード | 1 | 2 | 3 | 4 |
骨棘形成(骨のとげができる) | あり | あり | あり | あり |
関節裂隙狭小化(関節のすき間が狭くなる) | なし | あり(狭くなる程度が1/2以下) | あり(狭くなる程度が1/2以下) | あり(すき間が消失) |
軟骨下骨の骨硬化(土台の骨が硬くなる) | なし | あり | あり | あり |
《治療を受けられない場合(除外基準)》
血液中の血小板という細胞を取り出す必要があるので、検査で血小板がとても少なかったり、貧血がひどかったり、採血すると、針を刺した部分から出血したりする可能性がある患者さんは治療を受けることが出来ません。
また、この治療法は「バイ菌」を殺すような消毒薬のような働きは無いので、治療する目的の部位が感染していたりすると治療を受けることができません。
女性は妊娠中あるいは授乳中の場合、妊娠している可能性がある場合、治療中に避妊する意思がない場合は治療を受けることができません。
上記以外にも、施術前に詳しく検査させていただき、医師の判断で施術が受けられない場合があります。
治療後の注意点
- 注射後3~4日後は、細胞の活発な代謝が行われますので、腫れやかゆみ、赤みや痛みが出るなどがありますが、その後自然に消失していきます。
- 痛みを強く感じている間に、安静にし過ぎてしまうと、治療部位が硬くなり長期的な痛みの元になる可能性があります。可能な限り、治療直後よりストレッチなど、しっかりと動かすためのトレーニングが必須です。
- 投与部位は翌日から浴槽につけていただいて大丈夫です。
- 投与後、数日間は血流の良くなる活動(長時間の入浴、サウナ、運動、飲酒など)を行うことで、治療に伴う痛みが強くなることがあります。ただし、この痛みが強くなったからと言って、治療効果に差はありません。
- 関節は細菌に弱いので、清潔に保つよう心掛けて下さい。
治療の長所・メリット
- 提供(採取)する細胞はご自身の血液なので、拒否反応・アレルギーが起こりにくい。
- 日帰りでの処置が可能である。
- 治療後から普段の生活が可能である。
- 治療手技が簡単で、治療痕が残りにくい。
- 何度でも受けることができる。
- 超急性期、急性期、亜急性期、慢性期のどのタイミングでも受けることができる。
- 関節、筋、腱、靭帯、骨など運動器の大半に対して治療を行うことが可能である。
治療の短所・デメリット
- 疾患を根本から治す治療ではない。
- 治療効果に個人差があり、患者様によっては、ご満足いく結果に至らない場合あります。
- 数日間、炎症(痛み、熱感、赤み、腫れ)を伴う。
- 一度に広範囲の治療を行った場合、硬さ・しこりが残ることがある。
- PRPを投与する箇所、またご自身の血液(細胞)を採取する部位に感染症が起こる可能性がある。
- 適切な物理的負荷を加えないと、治療部位が硬くなり長期的な痛みの元になる可能性がある。
- 長期にわたる治療効果は確認されていない。
- 社会保険・国民健康保険など医療制度上の保険で受けることができない。
治療にかかる費用について
この治療は公的保険の対象ではありませんので、当医院の所定の施術料をお支払いいただきます。
PRP注射1部位につき
☆ 採血30-32ml / PRP 4ml 価格 110,000円(税込)
PRP注射同一部位2回目以降
☆ 採血30-32ml / PRP 4ml 価格 66,000円(税込)
(料金には診察料、採血・注射施術料、PRP精製技術料、精製キット他諸材料費が含まれます。)
(このPRP治療は保険診療の対応外となっておりますので自費診療となります。)
施術料につきましては、施術料表をお渡しし、併せてご説明いたします。
ご不明な点は医師・スタッフにお尋ねください。
治療を受けることを拒否することについて
この治療を受けるか拒否するかは、ご自身の自由な意思でお決めください。この治療を拒否しても、一切不利益を受けることはありません。
血液採取後であっても、PRPを投与する直前まで、いつでも取りやめることができます。取りやめることによって、一切不利益を受ける事はありませんし、これからの治療に影響することもありません。
(但し同意を撤回するまでに発生した治療費その他の費用については実費をお支払いいただきます)
ただし、治療を行った後は、健康管理のために、必要に応じて適切な検査を受けていただき、医学的に問題がないかを確認させていただきます。
データの二次利用について
本治療に関する患者さんの情報は、原則として本治療のためのみに用いさせていただきますが、将来計画される別の研究や治療にとっても貴重な情報として使わせていただくことに、あなたの同意が頂けるようお願いします。
あなたの同意が得られれば、他の研究に情報を使用する可能性があります。その場合、あなたの検体や診療情報は個人が特定できない形で使用され、当該機関の倫理審査委員会によって、個人情報の取り扱い、利用目的などが妥当であることが審査されたものに限定いたします。
個人情報に関して
「個人情報の保護に関する法律の施行」に基づき、当院には、個人情報取り扱い実務規程があります。本規定の閲覧をご希望の方はお申し出下さい。あなたの氏名や病気のことなどの個人のプライバシーに関する秘密は、固く守られ外部に漏れる心配はありません。
本治療による成果については、今後の治療に役立てるため、医学に関する学会、研究会などでの発表、論文などでの報告をさせていただくことがあります。その際には、あなたのお名前など、個人の秘密は固く守られ、個人が想定されない形(連結可能匿名化)にいたします。
健康被害が発生した場合の補償および治療
本治療によって健康被害が生じた場合は、医師が適切な診察と治療を行います。
その治療や検査等の費用については、前項「治療にかかる費用について」に記載の通り、この治療は公的保険の対象ではありませんので、全額負担となります。
また、想定の範囲内を超える重篤な健康被害が生じた場合には、当院または担当医師の加入する保険から補償の給付を受けることができます。
しかしながら、健康被害の発生原因が本治療と無関係であった時には、補償されないか、補償が制限される場合があることをご了承ください。
本治療の対象とする方の選定基準
本治療は患者さんご自身の血液の採取が必要であり他人の血液はご使用出来ません。処置中または処置後の合併症及び副作用が起こる可能性があるため、以下の基準に該当する患者さんは本治療の対象外とします。
- 担癌状態にある者
- 抗癌剤もしくは免疫抑制剤を使用している者
- 明らかに感染を有する者
- 発熱(38.5 ℃以上)を伴う者
- 薬剤過敏症の既往歴を有する者
- その他、担当医が不適と判断した者
本治療から生じる知的所有権について
本治療についての成果に係る特許権などの知的所有権が生じた場合には、本治療を受けていただいた患者さん、または患者さんの代わりをつとめる方が、これらの権利を持つことはありません。
これらの権利などは、担当医師あるいは本治療を実施する機関に帰属することとなりますことをご了承ください。
連絡先(相談窓口)
当院では安心して本治療を受けることができるよう健康被害が疑われるご相談および問い合わせ等に対して、相談窓口を設置しております。相談内容は一旦相談窓口にて承り、医師又は担当の事務職員が迅速に対応致します。
相談窓口連絡先: | TEL(045)508-7710 月・火・水・金・土:9:00~12:00 / 15:00~19:00 ※休診日:木・日・祝祭日 |
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備考
厚生省への届出
再生医療等の名称:「多血小板血漿(Platelet-rich plasma: PRP)を用いた整形外科疾患に対する治療」
再生医療等提供計画を厚生労働大臣又は
地方厚生局長に提出した年月日:2020年 2月 26日
再生医療等提供計画の計画番号:PB3190103
認定再生医療等委員会の名称:安全未来特定認定再生医療等委員会
認定番号:NA8160006
〒213-0001 神奈川県川崎市高津区溝口1-19-11 グランデール溝の口502
Tel. 044-281-6600 Fax 044-812-5787
本治療施術場所
細胞(血液)の提供を受ける医療機関名: 医療法人社団 三朋会 嶺 整形外科クリニック
管理者名:嶺 裕之
実施責任者:嶺 裕之
多血小板血漿(PRP)を用いた整形外科疾患に対する治療を
提供する医療機関名: 医療法人社団 三朋会 嶺 整形外科クリニック
管理者名:嶺 裕之
実施責任者:嶺 裕之
よくある質問
PRP療法は安全ですか?
PRP療法はご自身の血液を利用するため安全性も高く、来院当日の身体の負担も少ない治療です。
どのような人がPRP療法の対象になりますか?
人工関節置換術など手術が必要なほどではないが関節軟骨が原因となる痛みがあり、保存療法(薬の内服やヒアルロン酸注射、リハビリなど)の効果が乏しく、痛みが増悪傾向の方が主な対象となります。
高齢ですが治療を受けることが出来ますか?
PRP療法を受けることが出来ます。身体に負担の少ない治療なので高齢の方も治療を受けることができます。
但し関節に関しては関節破壊が強い方は年齢を問わず手術が適している場合もあります。
PRP療法はひざを切開することになりますか?
ひざの切開は必要ありません。
ご自身の血液から抽出したPRPをひざ関節内に注入するだけなので身体の負担は通常のヒアルロン酸注射と殆ど変わりません。
PRP療法の効果はどの位くらいで現れますか?
個人差はありますが注入後1週間ほどで効果を実感される方もいます。
症状や年齢などにも左右され場合によっては安定した効果が出にくいこともあります(治療効果や効果の持続期間には個人差があります)。
PRP療法による痛みの改善効果はどの位続きますか?
海外の治療報告によればPRPを1~3回注入後、約12ヶ月続くと報告されています。
治療後は通常通りに活動してよいですか?
治療当日は安静にして活動レベルを最小限に、翌日よりトレーニングを開始します。
安静にし過ぎてしまうと治療部位が硬くなり痛みの元になる可能性があるので、可能な限りストレッチなどしっかり動かすトレーニングが必須です。
PRP投与後に注意することや特別な症状はありますか?
個人差はありますが投与後に腫れぼったさや違和感を感じる方もいらっしゃいます。
この場合ひざを冷やして経過を見ていただくと症状は数日で改善します。1週間以上継続する場合はご相談ください。
なぜ自由診療なのですか?
PRP療法は保険適用前の新しい治療だからです。
現在米国でひざ関節症の患者さんを対象として有効性を確認する治験は始まっております。
安全性は確認されていますが、有効性はまだ検討段階のため、健康保険が使用できず自由診療となります。
しかしながら、今現在つらい痛みを抱えて何とかしたいと考えている方の治療の選択肢として当クリニックではこの治療を提供しています。